今後たまにこんなコラムも掲載していきます。趣味で書いたものですね。
本編
昔テレビで見たワインのソムリエはどうしたものか、ワインを口に含むとドゥルドゥルとしたのだ。ガキの僕からしたら意味が分からない。けれどもソムリエを囲んでいる大人たちが深くうなずいたり、どういったコメントを聞けるのかと待つ姿を見てるとドゥルドゥルすると尊敬を集められるのかなと幼心にそう思い込んだんだ。
しかしながらそれがどうかっこいいのか、なぜ視線を集めるかまではわからなかった。なので母親に聞いてみたのだ。どうしてワインってドゥルドゥル飲むの?といった具合に。
あれがワインのおいしい飲み方よ
母親はすぐに僕にそう教えてくれた。ドゥルドゥルすればおいしくなる理由はわからなかったが、僕は翌日にぶどうジュースでドゥルドゥルしてみることにした。
はじめは上手くドゥルドゥルできずに口からぶどうジュースが滴る。もったいない。滴る。もったいない。
何度かの練習を経てどうにかドゥルドゥルができるようになった。よりおいしいぶどうジュースが飲めるに違いない。明るい未来が僕を待っているのだ。
ごほっ!ごほ…しぶきが喉の奥にあたって咽る。再びドゥルドゥルする。空気ばかり吸えておいしくない。何よりうまくドゥルドゥルすることに必死。口からこぼれそうなぶどうジュースをどうにか口内に維持するためにずっと空気を吸いドゥルドゥルする。
ドゥルドゥル
咽る
ドゥルドゥル
ドゥルドゥル
ドゥルドゥル
咽る
ドゥルドゥル
何がそこまで僕を急き立てたのかわからないけどずっとドゥルドゥルしてた。その様子を傍からみていたおばあちゃんには行儀が悪いからやめなさいと叱られた。でも僕には大義があるから言ってやることにしたんだ。
おばあちゃん、これはソムリエがやるおいしく飲むコツなんだ。
何を言っているんだという顔はこういう顔かと、教科書に載せたいくらいの表情のおばあちゃんを見てようやく、これはおいしい飲み方じゃないんだなって察した。
そこから幾星霜。僕も大人になりワインを楽しめるようになったしお酒の中でもワインを好きになった。そして今夜も自宅で一人、新しいワインを開けた時には今もドゥルドゥル咽るドゥルドゥルを繰り返してる。
え?なんで今も咽てるのかって?そりゃお前、ドゥルドゥルってやるからだよ。